2012年1月16日

昨年を表す漢字は「絆」でした。もともとは足枷や束縛などのマイナスの意味だったそうです。

現在、大学等と進めている共同研究でも地域の繋がりが健康や生活満足に与える影響を分析しています。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)と称されている信頼や互恵の関係については米国で広く研究されていますが、パトナムが記した『孤独なボーリング』は良く知られています。

国内では健康福祉と地域経済、都市計画は政策立案の時点から別個の視点で議論されます。

2006年に米国農業経済学雑誌(American Journal of Agricultural Economics)に掲載されたゲッツとルパシンガの論文は日本国内ではあまり知られていませんが、ウォルマート(Wal-Mart)によって各地の社会関係資本を低下させたことを分析で明らかにしています。郊外型大型店が商店街をシャッター通りにしてしまうという紋切り型の指摘は一般的によく言われています。

顧客の争奪戦がもたらした結果かと各地を訪れて思ってしまいますが、実際にはもっと複雑な影響と副作用があるのかもしれません。上記の論文では教育水準や人種構成、年齢などの他、ウォルマートの店舗数と11年間の店舗増加数が、社会関係資本だけではなく企業数やNPO数、はたまた投票率、教会信仰などとの相関関係を分析しています。統計的分析の重要性を改めて確認しましたが、この分析が農業系の雑誌に掲載されていることに私は驚きました。

わが国のTPPへの参加についても広い視野からの分析を元にした質の高い議論が必要ですね。