要旨

  • ナラ枯れ対策のための手法の一つとして「ネットによる被覆」を今回は紹介した。
  • 身近な自然災害の発生を防ぐための「森林の感染対策」が必要な時代である。
  • ワクチンに頼らない「自然と人間の健康づくり」についても真剣に考える必要がある。

国内外の感染状況

新型コロナウイルス感染症は2020年の幕開けとともに中国の武漢市から拡がり、今日現在で地球上の5,900万人以上が陽性と診断され、140万人近くの方が尊い命を失っています。

心配だった心持ちを洞察してブログで綴っていたところ、テレビや新聞の方々も共感してくださり、先週の東京新聞にも裏表紙でカラフルに紹介されました。

国内のいくつかの都道府県でも過去最多の1日当たりの陽性者数が報告されており、治療に努める医療機関の関係者だけでなく、感染拡大防止に配慮して経済を支える接客業などの方々の日々の努力により収束するのを祈るばかりです。

ナラ枯れの「感染対策」

夏にお知らせした三浦半島におけるナラ枯れの調査に引き続いて、今月は具体的な対策についても実施しました。

今回は、カシナガ(正式名称はカシノナガキクイムシ)という昆虫と菌によって枯死してしまったコナラでの「カシナガの駆除」と周辺の未感染ナラ類の「カシナガの防除」です。

全長2cmのスケールに乗ったカシナガ(左の一匹だけメス)
メスの背中にある菌を運ぶ壺(菌嚢)の拡大写真

「駆除」とは、健全に生育するコナラやクヌギがカシナガによって攻撃されるのをあらかじめ抑制するために実施する封鎖(収容)です。

一方で「防除」とは、既に立ち枯れしたコナラの幹で繁殖しているカシナガの新成虫が来春に大量に飛散するのを抑止して感染を予防することです。

西日本で先行した被害とその対策などを踏まえ、複数ある手法のうち今回は立地環境や環境負荷などを考慮して防除と駆除の両方に効果が期待される「ネットによる被覆」を山林所有者と協議して選択しました。

被覆の素材は長期的に機能して再利用が可能な点を考慮して今回は「ステンレス製ネット」を選び、腹巻きのように、または日本庭園のマツの「こも巻き」のように幹を覆いました。

(長尺のまま斜めに巻く方法と短く切断して水平に巻く方法との両方を試験的に実施しています。)

感染による立ち枯れしたコナラへの駆除対策
未感染のコナラへの防除対策

ここ数年で関東でも急拡大しつつある「ナラ枯れ」は、巨木の倒木による土砂災害の発生やクマの生活範囲拡大による農作物や人的被害などにも発展する可能性があります。

今回の立ち枯れした巨木も急な斜面に生育しているので数年で倒れることが予想され、周囲に被害を及ぼすリスクが高い場合には伐倒するなどの対策も検討する必要があります。

カシナガは「おっちょこちょいなアリ」のように一匹一匹はかわいい動きをして憎めないのですが、集団で行動した場合に人間への影響が大きいためにやむなく上記のような駆除などの対策を行います。

しばらく数年の間は広範囲への感染の拡大が続くと想定されるため、「森林の感染対策」として場所に応じて的確な対策に努めたいと思います。

一般的な病気のように発生してしまった後の対処療法が中心となりがちですが、将来に向けた「森林の健康づくり」としての予防も積極的に行って参りましょう。

新型コロナ感染症とナラ枯れの予防対策

かつては薪や炭などの燃料、肥料などの生活の必需品を産出していた頃の森林では、樹木が太く成長する前に伐採されて利用されていました。

生活スタイルが大幅に変わり、建材としての一部の利用されるだけとなった現代では樹木も伐られることなく大きく太く成長しています。

大きく太くなった巨木は重心の位置が高くなり、大きく広げた枝葉は風の力を大きく受けるので、大地震や激甚化する台風などの自然災害の発生時に倒伏しやすいという説もあります。

カシナガは感染させた木の幹の中で餌となる酵母とともに幼虫を育てて羽化させるため一定の水分を必要とするという理由で、枯れてもしばらくの間は乾燥しない巨木の根本付近を選ぶとされています。

ナラ枯れが急激に増加する背景に巨木が増えたことがあるのであれば、生活を昔に戻すことは無理にしても森づくりの一環として生活の一部に木材を利用したり、新たに苗木を植えることも重要になります。

当社では自然と人間の健康の両立を図るための「もりのフック」を発売中です。

新型コロナウイルス感染症の予防とともに、ナラ枯れによって枯れた樹木の更新にも役立つ「ニューノーマル」な製品です。

ホリデーシーズンの大切な人へ「の」プレゼントとしてもお薦めします。

地域の免疫力を高める提案

感染を予防しながら「新しい生活様式」を過ごし、心と身体の健康を維持するための場所として公園などの屋外空間の価値と評価が見直されつつあります。

ワクチン開発への期待もありますが、自分自身の免疫力を高めるための運動として公園におけるウォーキングやランニングがとても人気です。

当社でもこれまで健康増進のためのプログラムの開発にも挑戦してまいりました。

来春にも新しいサービスの開始を予定しており、健康な地域づくりに貢献できるよう精進します。

先の「ナラ枯れ」でもワクチンのように薬剤をあらかじめ注入して予防する方法もありますが、殺菌剤なので周辺の自然環境への影響も否定できないために選択していません。

ワクチンにも副作用があるという前提で、自然の一部である人間も森林も日頃の健康づくりが重要です。